(2019/5/20掲載)
レーザー光の強度を何桁にもわたって調整したいとき、ニュートラル・デンシティー・フィルター(NDフィルター)というものを使うことがある。2倍とか10倍とか、段階的に変化させるなら、固定透過率のNDフィルターを何枚か重ねて使うという手もあるが、フィルターを何枚も使うと、フィルター表面で反射した光が2枚のフィルターの間を往復し、ゴーストの原因になる。またもっと細かく連続的に変化させたいということも多い。その場合よく使われるのは、濃度勾配をつけてクロムメッキしたガラス円板を回転させるものである(図1)。しかしこれは50mmの小型版でも8万円ほどするので、かなりの負担になる。光を減らすだけでこれだけの投資というのは何となく納得がいかない。
精度的には落ちるが、10mm×50mmで2桁可変の長方形のものならThorlabsで安く手に入る(NDL-10C-2、11000円程度)。
これを長手方向に平行に動かす機構を付加すればよい。ラックピニオン式の移動機構なら可動範囲50mmのもので15000円程度なので、合計27000円程度で何とかなる(図2)。筆者はこれをビーム径3mm、600mW(100MHz繰り返し)のモードロックレーザーの調光に使っているが、特に問題は起こっていない。
更に倹約しようと思えば、多少工作の手間は増えるがラックピニオンの代わりにミニチュアリニアガイド(SSEB6-100 約4000円)を使う手もある(図3)。写真のものは縦に平行移動するタイプである。リニアガイドのランナーの方を支柱に固定し、レールの方を上下に動かす。レールに10mmアルミアングルを取り付け、そこにNDフィルターを接着してある。このままだと重力でレールが下まで落ちてしまうので、リン青銅製の板ばねで適当に摩擦を持たせてある。
注意点:
50mmで2桁ということは、1mm当たり10%くらいの勾配があるので、太いビームを通すと均一性が悪くなる。
図1 可変NDフィルター(市販品、回転式)
図2 可変NDフィルター(横型ラックピニオン式)。最初に透過光の強度をパワーメータで測定して、減光率を求め、ラックピニオンの部分に目盛りとして貼り付けておくと便利である。これは回転式ではなかなか難しい。
図3 可変NDフィルター(縦型リニアガイド式)。縦スライド式は場所を取らないというメリットもある。