レーザービーム引き回しの定石(2)

(2019/1/13掲載)

<正確に光軸上にレンズを入れる>
ミラーやアイリスを配置してビームの引き回しが完成したら、次はレンズ類を設置する作業に移る。光(レーザー光に限らない)を試料上に絞り込む、試料から出てきた散乱光や発光を分光器のスリット上に絞り込むなどの目的で凸レンズを用いる場面が多い。

図3 レンズの挿入の仕方。(a)レンズの挿入前、(b)挿入後。(c)このようなカードを用意しておくと、戻り光を見るのに便利である。平凸レンズの場合は、フラットな面を焦点側にする(球面収差を少なくするため)。
 

レンズはその中心が光軸上に来るように、かつレンズの面が光軸に垂直になるように配置しなければならない。レンズを入れる前のビーム位置を目標の位置(十字線)に合わせておき(図3(a))、レンズを入れた後(図3(b))に同じ位置にスポットが戻るようにレンズの上下左右の位置を合わせれば、レンズの中心が光軸上に来ていることになる。次にレンズの表面からの反射光を見れば、レンズが光軸に垂直になっているかどうかがわかる(図3(c))。
 以下、写真を使ってその様子を説明する。

図4 光学系の全景。画面の右にアライメント用の光源があり、レーザービームはカードの切込み部分を通過してレンズに入射し、左端のターゲットに焦点を結ぶ。

図5 (a)はレンズ挿入前の十字線上のレーザースポットである。ビームの太さを反映してφ2mm程度の像になっている。(b)はターゲット上でピントが合うように凸レンズを挿入したときの像である。このときスポットが再び十字線上に来るようにレンズの位置を調整する。

図6 切込み付きカードに映ったレンズからの反射光をレンズ側から撮影したもの。 (a)は調整不良の状態である。レーザービームの裾が切込みの縁に当たって弱く光っている。その上方にレンズの表面、裏面からの反射像がバラバラに現れている。レンズの面がやや上を向いていること、ビーム位置がレンズの中心から左右にずれていることが分かる。(b)は左右のずれを修正した状態。表面、裏面の反射像は重なり、左右対称になっているので、レンズの水平方向の位置および首振り角度は最適化されたと考えられる。(c)さらにレンズのアオリを調節してすべての戻り光の像がレーザービームの位置に重なるようにする。これで、アライメントは完了である。
 なお、切込み付き紙片の代わりに、半透明のプラスチックシート(書類用フォルダーの切れ端など)と用いる流儀もある。