(2020/6/9掲載)
<ポンプ&プローブ実験>:
ピコ秒からフェムト秒の時間分解測定を行うには、ポンプ光パルスで試料を励起し、遅れて来たプローブ光パルスで反射や吸収を見ることで時間分解を行う(図1参照)。この時、2つのレーザービーム(試料上で数十μm以下)を正確に重ね合わせる必要があるので、光学系の調整には神経を使う。
図1 ポンプ&プローブ実験におけるビームの重ね合わせ。
<遅延光学系の調整>:
ポンプ&プローブ実験に必ず必要になるのが、遅延光学系である(図2参照)。光学遅延ステージの送り0.15mmが1psに対応するので、たとえば200 psまで測定しようとすると、ステージを30 mm動かすことになる。ステージを動かしてもビームの重ね合わせが崩れないためには、光学遅延ステージにおける光軸合わせを注意深く行う必要がある。(ポンプ光、プローブ光ともに試料手前の凸レンズで試料上に集光されているので、折り返しビームの位置ずれの大きさがそのまま試料上でのビーム重ね合わせに反映されるわけではない。)
折り返しビームの位置ずれを生じないためには、
(1) 入射ビーム①が平行光線であること
(2) 入射ビームがステージの直動方向と平行であること
(3) 折り返しのミラー対が正確に直角であること
(4) ミラー対の反射面がステージの直動方向と平行であること
が必要である。
<アイリスを使う従来の方法>:
折り返しビームの位置ずれのチェックでよく使われるのは、図2のようにアイリスを使う方法である。
レーザー光のビーム径をアイリス1で1~2mm程度に絞り、折り返したビーム②をアイリス2に通す。ステージを前後してもビームがアイリス2から溢れなければ、合格という事になる。
簡便には、アイリス2からの散乱光を目視して、あふれが均等かどうかを確認する方法があるが、絞りの羽のエッジによる散乱などに惑わされて、案外判定しにくい。少し定量的な方法として、アイリス2の後ろにおいたパワーメータの出力が変動しないことを見ることもあるが、この場合は、ビームがどちらの方向にずれたかの判断ができないので、最適化が簡単ではない。
図2 遅延光学系の調整法(従来型)
<webカメラを利用する方法>:
そこで最近筆者が採用しているのは、図3のようにwebカメラを使う方法である。レンズを取り外したwebカメラを用意し、折り返しビームを直接送り込む。もちろんCCDを焼かない程度にレーザー強度を落としておく必要がある。ピクセルサイズは数ミクロンなので、原理的にはかなりの精度で位置をモニターすることができる。実際にはアイリス1をかなり小さくしてもビーム像はPC画面上で画面の1/3を占めるほどの大きさになり、中心位置の見極めは正確にはできないが、慣れれば、その大きさの1/10程度まで認識することができるし、重心位置を算出するソフトを使えばもっと精度が上げることも可能である。
ステージを往復してもスポット位置が移動しないように根気よく①の打ち込み方向を調整して行けば、(2)と(4)がセットで満足される。左右ずれが解消しない場合は、(3)が疑われる。ここでも、白板ソフトを使って十字線を入れると中心位置移動の確認に便利である。
図3 遅延光学系の調整法(webカメラを使う方法)