(2018/10/27掲載)
レーザー利用実験のセットを組み上げるには、ビームのとり回しが始めの大きな仕事となる。実験を効率的に進めるには、重要な工程であるが、実践的なことは教科書にも書いていないし、系統的に教えてもらう機会は案外少ない。 まずこの項目では、レーザービームの引き回しの定石について述べる。
<一般的な心構え>
レーザービームはテーブル面に平行に(つまり水平面内に)、かつ極力テーブルの縁にも平行に引き回すべきである。一見どうでもよい事のようであるが、きれいに配置した方が後の調整が楽になる。ビームのテーブル面からの高さをあまり低くすると光学素子やそのホルダー、マグネットベース。クライオスタットなどが収まら なくなる。一方、あまり高くすると振動に弱くなるので光源や分光器など実験系の全体をイメージして適正な高さを決める必要がある。
<ビームの調整機構>
ビームを遠くまで飛ばす場合、光学遅延など複雑な光学系より上流側にビーム位置と角度を確認するための絞り(可変)を入れておくとよい。こうしておけば、レーザーの再調整などで、ビーム位置や方向が変わっても容易に光学系を復元することができる。絞り1と2の間隔は長いに越したことはないが、30cmくらい、絞りの最小径1mmくらいが、使いやすいであろう。 レーザービーム(一応太さの一定した平行光線と考える)は、その位置(x, y)と方向(φ, θ)の4つの自由度を持っている。1枚のミラーでは「首振り」と「あおり」の2つの自由度しか制御出来ないから2枚のミラーが必要となる。ただこの際、ミラーの配置をよく考えないと、調整が大変になる。 2枚のミラーは図1のようになるべく距離を離し、2個目のミラーの直後に絞りを置くことがコツである。こうすると、1つ目のミラーを位置制御、2枚目を方向制御と近似的に役割分担ができるので調整が容易になる。 図1 ビーム引き回しの例。 図2 2個のアイリスによるビーム位置の固定。この写真には、M2、絞り1、絞り2が写っている。 (a) 絞りを全開にしたところ。後方の紙にレーザースポットが映っている。 (b)2つの絞りを最小径まで絞ったところ。絞りを絞ってもビームが通り、かつ明るさが最大になるように、M1、M2を調整する。